序にかえて
MSX規格によるパーソナルコンピュータの発表を知らされた当初、私はどちらかというと軽い気持でこれを眺めていました。ゲームなどのホビーを主体にしたものだろう、という先入感がそうさせたのです。しかし、実際に接し、使ってみるとどうやらこれは二つの顔を持ったコンピュータだな、ということが徐々に分ってきました。そのひとつは、もちろんROMカートリッジを挿しこむだけですぐにゲームその他が楽しめる仕様にあります。そしてもうひとつの顔は、完備した BASICをじょうずに使えばいろいろと役に立つものになる、ということです。このことは言葉を変えていえば、やさしく使おうと思えばその要求に応えてくれるし、自分でいろいろな工夫をすればかなり高度な使いかたにも耐えられるモデルということになるでしょう。
本書はMSXのこうした二面性を前提に、音楽を演奏したりゲームで遊んだりすることに必要な知識と共に、データを保存したり分類したりといった実用的なプログラムを作るための考えかたやそのための知識が身につくようになれば、という願いをこめて書き上げました。またMSXモデルが家庭に置かれた状況を想定して、中学生の良夫君とその父親との対話形式でまとめています(1~8章)。
なお、さらに幅広い応用と本格的な使いかたのために欠かせない、移植のテクニックと機械語モニタについてを9章と10章でまとめています。
8章までのプログラム・リストはすべて1行39桁で印字されています。これはSCREEN 0のデフォルト値(WIDTH 39)と同一ですから、リストの打ちこみやデバッグの時はSCREEN 0にしてLISTをとり、本書と参照いただければ相違点が見つけやすくなります。
10章のモニタ・プログラムおよびサンプル・プログラムについては株式会社エスクエラ成川宣孝氏の全面的な協力により提供いただいたものです。イラストレーションを担当いただいた脇 雅英氏と共に紙上を借りてお礼申しあげます。
1984年4月
※MSXturboR は、「1」「2」キーでCPU変更ができます。